自分の中で久々のライトノベルでの大ヒット。
どれくらいかというと、オールタイム・ベストのされど罪人は竜と踊る、戦う司書と並んで一番いい棚に並べたくらい。 この本は「魔法少女育成計画」「魔法少女育成計画restart(上・下)」に登場した人物の裏話的な小編の集まりになっているので、それらを読んだのが前提、というかネタバレになるので読んでからページをめくらないと後悔するレベルで損する。 だけどもぜひ、この魔法少女育成計画シリーズ全4冊を読んでほしいと思った。 ※なのに以下ネタバレがあります。 そもそも、「魔法少女育成計画」が素晴らしかった。 端的に言うと魔法少女+バトル・ロワイヤルなのだが、戦闘が強い人物が必ずしも勝利するわけではないのがよい。 魔法少女は高い身体能力と各自一つの特殊能力を持っている。「絶対に死なない」「ポーズを取ると絶対服従の命令することができる」という一見強すぎて勝ちが確定ではないかと思える能力にまじって、「困ってる人の声が聞こえる」「音楽を奏でる」という力を持った魔法少女もおり、それなのに勝敗が全く読めない。チームプレイが勝つこともあれば弱い人物が足かせになったりもする。 16人がほとんどいなくなる戦いにもかかわらず、一般的なライトノベルの厚さで収まり綺麗に終わる。本当にされど罪人は竜と踊る1巻を読んだ時の感動が再現されるようだった。 そして「魔法少女育成計画restart」 上下巻になりこちらは最初趣が異なるようにみえる。集められた魔法少女が仮想空間で生き残るためにボスを目指してそこのモンスターと戦う、というよくある吸い込まれ系の話なのではないかと思うのだがやっぱり人が死ぬ。モンスターに殺されるのはまだしも、強いと思われた人物も不審な死を遂げていく。疑心暗鬼になりつつ戦い抜いた先にはまた、魔法少女同士で戦う展開が待っている。 restartが前巻と違うのは、登場人物がみなバトル・ロワイアルをくぐり抜けてきた魔法少女であり、いわば前回を予選とする決勝戦のようなものであるということだろうか。また、魔法少女同士で殺しあったという記憶がない者、うっすらと覚えている者、殺し合いをエスカレートする側だった者が混ざっていてそれが一層の混迷を生む。戦わなくてよかった戦いがあり、死なずにすんだはずの者が消えてゆく。 そんな中でも「巨大化できる」「下半身を好きな動物にできる」「5分間で自在に料理を作れる」「あらゆるものを分解する光線を放てる」「壁を喋れる状態にできる」「準備すれば絶対防御を得られる」などの多彩な力が個性と戦略、謎を生み出しより深みを増している。 前回と今回で共通して、内面の成長が一つの話の中で感じられるキャラクターがいるのも戦闘やどんでん返しと別要素として感動系の印象を与えられた。これだけ詰め込まれ密度が高い本は久しぶりであった。 「魔法少女育成計画Episodes」 上の2つの話も絶賛しているにもかかわらず、あえて一番すごいのはこれだと言おう。 ※もうネタバレを厭わないです。 無印の魔法少女育成計画、restartともに少ないページ数でうまく完結している分、多数の魔法少女達の戦い以外の面の描写が少ないという問題があった。そこで本巻である。 本編で「嫌な奴」としか感じなかった命令リーダーのローラ。 実は面倒見が非常によく、普段は先生や友だちから見捨てられていたような落ちこぼれの魔法少女“たま”に懇切丁寧に魔法少女の生き方を教え、まとめた冊子をあげ、読めない漢字にはルビを振って理解できるまで(罵倒しつつも)付き合った。結果“たま”からは怖い人ではなく実はいい人?という印象を持たれていたことがローラの株を上げている。 無印であれほどスイムスイムに慕われ憧れていたのにはちゃんと理由があったんだなとわかるとともに、自分はローラを勘違いしていた、やっぱり嫌なだけではなかったんだと負の感情を精算できる気がした。 すぐに退場した戦わない魔法少女、ネムリン。 夢の世界では世界を何回も救い、貢献度パラメータであるキャンディーの数も夢のなかではダントツであった。それだけでなく、夢の世界を自由に行き来することができる能力で、他の魔法少女にも多大な影響を与えていた。 いちいち謎の正義のポーズをとるマスクドワンダーの理由も分かったし、逆にちょっとした気持ちで与えたアドバイスが結果的に本編での悲劇につながったりもしている。 このように、あまり活躍しなかった魔法少女や悪役としか劇中見えなかった魔法少女の素顔を垣間見、それぞれが考えを持って生きていてしかも魔法少女として恥じないような人物性を備えた人が多いと安心することができた。 結果、どの登場人物も好きになれる稀有な小説群であったと思えるからこそ、このEpisodesを一番だと推したい。 アニメ化するならこのEpisodesは退場した魔法少女が一定数貯まると合間に挿入されるような形になるといいなと思う。
by phys-can-tell
| 2013-06-25 12:31
| ライトノベル
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